全身性強皮症(systemic sclerosis)は、皮膚と内臓諸臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患で難病に指定されています(指定難病51)。
全身性強皮症は免疫異常、血管障害、線維化を主な病態として、臓器線維化による臨床症状として、レイノー症状[i]、皮膚硬化、間質性肺疾患(Interstitial lung disease、ILD)、強皮症腎クリーゼ[ii]、心病変、肺動脈性肺高血圧症[iii]など、さまざまな多臓器障害を生じます。
他の自己免疫疾患に比してステロイドや免疫抑制薬の効果は限定的です。
特に間質性肺疾患は全身性強皮症の死因の35%を占めており、また間質性肺疾患が直接の死因とならない場合でも、高度な呼吸機能低下により生活の質(QOL)や日常の生活動作(ADL)の著しい低下を招きます。
間質性肺疾患に対しては、ステロイドや免疫抑制薬が第一選択薬ですが、その治療効果は充分ではありません。
近年、抗線維化薬[iv]であるニンテダニブが承認されましたが、進行を抑制する作用はあるものの、間質性肺疾患を改善する作用は無く、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対する新規治療薬の開発が強く望まれています。
AMEDの令和5年度「難治性疾患実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」に採択され、東北大学など12医療機関と「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対するPAI-1阻害薬RS5614の第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検)」を開始しました。
全登録患者の投与(1年間)を予定通り完了し、最終的な治験総括報告書は2026年5月頃を予定しています。
[i] レイノー症状:冷たいものに触れると手指が蒼白~紫色になる症状で、冬に多く見られ、初発症状として最も多いものです。
[ii] 強皮症腎クリーゼ:腎臓の血管に障害が起こり、その結果高血圧が生じるものです。急激な血圧上昇とともに、頭痛、吐き気が生じます。
[iii] 肺動脈性肺高血圧症:ヒトが生きるためには呼吸をして大気中の酸素を肺に取り込む必要がありますが、肺で呼吸するだけでは体の中に酸素は取り込めません。肺に取り込んだ酸素を、心臓に一度戻して、さらに全身に送る必要があります。心臓から肺に血液を送るための血管を肺動脈といいます。
この肺動脈の血圧が異常に上昇するのが肺動脈性肺高血圧症です。肺動脈の圧力が上昇する理由は、肺の細い血管が異常に狭くなり、また硬くなるために、血液の流れが悪くなるからです。
必要な酸素を体に送るためには、心臓から出る血液の量を一定以上に保つ必要があります。狭い細い血管の中に無理に血液を流すように心臓が努力するために、肺動脈の血圧が上昇します。肺動脈性肺高血圧症は難病に指定されています。
[iv] 抗線維化薬:その名の通り、組織の線維化を抑える薬です。線維化がおきていると判断される方や今後、線維化が進行することが予想される患者さんに処方されることがあります。抗線維化薬にはピルフェニドンとニンテダニブの2種類があります。