当社PAI-1阻害薬RS5614の抗加齢作用の作用機序の1つが、東海大学医学部や東北大学大学院医学系研究科との共同研究で明らかにされ、2026年5月6日Cell Death Discovery12:195に掲載されましたのでお知らせいたします。
https://www.nature.com/articles/s41420-026-03076-0
これまで、PAI-1阻害薬RS5614が、炎症や老化に伴う組織傷害を抑制することが明らかにされています。しかしその作用機序については、充分には明らかにされていませんでした。マクロファージ1)は、炎症や加齢疾患に伴う組織に集積し、“傷害を受けた細胞”を除去する上で重要な役割を演じています。PAI-1は傷害細胞や老化細胞で多く産生され、マクロファージなど免疫系に対して障壁(バリア)を形成し、マクロファージによる傷害細胞や老化細胞の除去作用を減弱します。一方、PAI-1阻害薬RS5614は、マクロファージによる傷害細胞や老化細胞の除去作用を増強し、炎症や老化に伴う組織障害を改善することが示唆されました。
本研究では、マウスの骨格筋の傷害モデルを用いて、まず炎症局所に集積している細胞がPAI-1を強く産生することを明らかにしました。さらに、PAI-1を欠損させる遺伝子改変や細胞移入の手法により、PAI-1が傷害を増強し、炎症が遷延することを明らかにしました。特筆すべきことに、PAI-1阻害薬RS5614の投与により、骨格筋の傷害が著しく改善することが認められました。本知見は、PAI-1阻害薬RS5614が、炎症や老化に伴う組織障害を改善する作用機序の1つと考えられ、RS5614の有する抗加齢作用を支持する知見です。
マクロファージによる傷害細胞や老化細胞の除去は、‘エフェロサイトーシス’と呼ばれています。傷害細胞や老化細胞はカルレティキュリン (CRT) 2)というタンパク質を細胞表面に発現し、マクロファージ表面にあるLDL レセプタータンパク(LRP)-1という受容体を介して認識され、除去されます。本研究では、PAI-1がCRTよりも強くLRP1に結合し、CRTと競合するために、CRTを介した細胞の除去が抑制されることを明らかにしました。注目すべきことに、PAI-1阻害薬RS5614は、PAI-1を阻害することでこのマクロファージによる‘エフェロサイトーシス’を増強し、傷害細胞や老化細胞の除去を促進します。
今回明らかにされたPAI-1阻害薬の新たな作用は、他の炎症性疾患やがん、加齢疾患の進展にも同様に関わることが推測されます。これまで、PAI-1阻害薬ががん免疫を増強することを明らかにしてきましたが、今回の結果は傷害細胞や老化細胞に対する免疫も増強する可能性を強く示唆しています。
1) マクロファージ
免疫系の細胞で、侵入した細菌などの異物を捕食・消化し、生体防御に大きく関与しています。体内で傷害を受けた細胞、老化した細胞やがん細胞の除去にも重要な役割を担っています。
2) カルレティキュリン (CRT)
多くのがん細胞や傷害を受けた細胞に発現するタンパク質で、マクロファージによる捕食を促進する働きを持ちます。「自分を捕食して」という目印の一つです。