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腹膜透析用ディスポーザブル極細内視鏡に関する論文掲載のお知らせ

当社が開発を進めている腹膜透析用ディスポーザブル極細内視鏡を用いた多施設共同臨床研究の成果が、国際科学誌「Scientific Reports」に掲載されましたので、お知らせいたします。

腹膜透析(PD)は、在宅で実施することができ、患者さんの自立した生活や生活の質(QOL)を維持しながら行うことのできる重要な腎代替療法です。一方、長期にわたり腹膜透析を継続すると、腹膜の構造や機能に変化が生じ、重篤な合併症として被包性腹膜硬化症(EPS)1)を発症することがあります。

現在、腹膜の状態を評価するために、腹膜平衡試験(PET)2)、排液中のバイオマーカー測定3)、CTなどが用いられていますが、これらの検査では腹膜表面の状態を直接観察することはできません。従来の腹腔鏡4)を用いれば直接観察は可能であるものの、外科的な処置や麻酔を必要とするため、安定した腹膜透析患者に反復して実施することは困難でした。このため、腹膜の形態を低侵襲かつ経時的に直接評価できる実用的な手段が求められていました。

当社は、聖路加国際病院、順天堂大学、東京慈恵会医科大学などと共同で、腹膜透析患者に留置されているPDカテーテルを介して腹腔内を観察できるディスポーザブル極細内視鏡を開発してきました。この内視鏡は、腹膜透析液を腹腔内に貯留したまま、麻酔を使用せずに腹膜表面やPDカテーテル内部を直接観察することができます。今回の研究で使用した内視鏡の挿入部外径は1.3 mmです。

今回の多施設共同臨床研究では、腹膜透析患者60例を対象に、本内視鏡を用いて腹膜およびPDカテーテル内部を観察しました。また、このうち49例では約12か月後にも再度観察を行い、腹膜所見の経時的な変化を評価しました。その結果、すべての観察は外来で麻酔を使用せずに安全に実施され、手技に関連する有害事象は認められませんでした。PDカテーテル内部では87%の患者にフィブリンの付着が認められ、腹膜表面ではフィブリン沈着、新生膜形成、微小血管の異常などが観察されました。

本研究で特に注目される点は、従来の腹腔鏡では捉えにくかった腹膜表面の微細なフィブリン沈着を高頻度に観察できたことです。従来の腹腔鏡では透析液を排液して観察するのに対し、この内視鏡では透析液を腹腔内に貯留したまま観察できるため、細いフィブリン線維の存在や動き、周囲組織との位置関係を、より生理的な状態に近い環境で捉えることができます。さらに、フィブリン沈着は新生膜形成や微小血管異常と重なって認められており、腹膜障害の病態を理解する上で重要な形態学的情報となる可能性が示唆されました。

一方、これらの腹膜所見と腹膜透析の継続期間との間に有意な関連は認められませんでした。また、約12か月後の再観察では、所見が新たに出現した例と消失した例の双方が認められました。これらの結果は、腹膜の形態的な状態が時間とともに変化し得ること、また、腹膜透析の継続期間だけでは個々の患者の腹膜状態を十分に捉えられない可能性を示しています。

この内視鏡の意義は、これまで十分に把握することが難しかった腹膜表面の形態を、患者ごとに直接かつ反復して観察できる点にあります。今後、内視鏡所見と腹膜機能の変化や臨床経過との関連がさらに明らかになれば、腹膜透析の継続や血液透析への移行を検討する際に、透析期間だけではなく、患者ごとの実際の腹膜状態に基づく客観的な情報を提供できる可能性があります。将来的には、腹膜透析医療を「治療期間を基準とした判断」から「腹膜の状態を踏まえた個別化された治療判断」へ発展させる新たな観察・評価手段となることが期待されます。

本極細内視鏡システムは、腹腔内を可視化する内視鏡部分と、操作性を高めるためのガイドカテーテル部分から構成されています。このうち、内視鏡部分はすでに薬事承認を取得しています。詳細は以下のとおりです。

 ・ 承認番号:30400BZX00294000
 ・ 一般的名称:軟性腹腔鏡
 ・ 販売名:経カテーテル腹腔鏡 PD VIEW
 ・ 類別コード:器 25

ガイドカテーテルについても製作が完了しており、現在、2026年度中の承認申請に向けて準備を進めています。ガイドカテーテルは、PDカテーテル先端周囲をより広範囲かつ安定して観察することを目的として開発したものであり、承認取得後には、本極細内視鏡による腹膜観察の操作性および臨床的有用性をさらに高めることが期待されます。

1) 被包性腹膜硬化症(Encapsulating Peritoneal Sclerosis: EPS)
長期のPDに伴って発症することがある重篤な合併症で、腹膜が硬化・肥厚し、腸管が癒着することで腸閉塞(イレウス)などを引き起こす疾患です。腹痛、嘔吐、便秘、腹水などの症状を伴い、進行すると生命に関わる場合があります。早期に病態を把握し、腹膜透析の中止や血液透析への移行を含めて適切に対応することが重要です。

2) 腹膜平衡試験(Peritoneal Equilibration Test: PET)
PD患者の腹膜機能、特に溶質や水分の移動特性を評価する検査です。

3) 排液中バイオマーカー測定
腹膜の状態や炎症などを評価する目的で研究・実施されています。代表的な指標として、腹膜中皮細胞の状態を反映するCA125や、炎症に関連するIL-6などが知られています。

4) 腹腔鏡
一般的な腹腔鏡では、腹部に数mm~1cm程度の小切開を加え、腹腔内にカメラ(スコープ)を挿入して観察します。腹膜を直接観察できる一方、通常は外科的処置や麻酔を伴うため、安定した腹膜透析患者に反復して行う検査には適していません。