当社は、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の藤村卓准教授らの研究グループと共同で、難治性皮膚腫瘍「血管肉腫1)」に対する新規治療法の開発に取り組んでおります。2023年9月から2024 年12月まで、パクリタキセル2)が無効の皮膚血管肉腫16 例に対し、パクリタキセルとPAI-1 阻害薬RS5614 の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験を施行し、安全にパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強することが確認されました(2026年2月10日適時開示済)。今回、この研究成果について、東北大学よりプレスリリースが発表されましたのでお知らせいたします。
血管肉腫は、血管内皮細胞3)ががん化する極めて悪性度の高い皮膚がんであり、欧米と比べ日本人の発症頻度は高く、近年増加しています。血管肉腫の第1選択薬は、パクリタキセルですが、全生存期間は649日と短く、長期寛解を得ることは困難です。パクリタキセルが奏効しなくなった後の治療は、有効な選択肢が乏しく、新たな治療薬の創出が医療上の喫緊の課題となっていました。今回の医師主導治験では、パクリタキセルが無効となった皮膚血管肉腫患者を対象に、RS5614とパクリタキセルの併用療法が実施されました。解析の結果、全生存期間(OS)4)の中央値は21.1ヶ月と既存の治療薬(パゾパニブ5))の12.1ヶ月を凌駕する良好な結果が得られました。また、無増悪生存期間(PFS)6)についても4.1ヶ月と既存の治療薬の2.8ヶ月に比べて改善が認められ、評価対象患者の86.7%において病勢の安定が確認されました。安全性についても、深刻な副作用の発現率は既存治療に比べて低く抑えられており、良好な忍容性が確認されました。今後、総括報告書をまとめ、論文として報告する予定です。
1)血管肉腫
皮膚がんの一種で、とりわけ頭皮の血管肉腫は100 万人当たり2.5人程度とまれですが、極めて悪性度が高く、急速に進行し5年の無病生存率は 20%以下と報告され、 標準的な治療法は確立されていません。
2)パクリタキセル
太平洋イチイの樹皮から抗がん作用が見いだされた化学療法剤(抗がん剤)で、現在は化学合成されています。細胞の分裂に関わる「微小管」に結合して、がん細胞の分裂をとめ、死滅させる(細胞死)と考えられています。
3)血管内皮細胞
血管の内腔を覆う細胞です。血管内皮細胞は血管の構成要素となるだけでなく、血液と組織が酸素や栄養素などの物質交換を行う場として働き、さらには様々な生理活性物質を産生して組織や臓器の機能を維持する働きがあります。
4)生存期間(OS)
治療開始から患者が亡くなるまでの期間を指し、がん治療の効果を評価する際に用いられる主要な指標のひとつです。
5)パゾパニブ
がん細胞への血流を抑えることで増殖を防ぐ「分子標的治療薬」の一種です。主に腎細胞がんや軟部肉腫の治療に用いられています。副作用発現率は93.5%と高く、主な副作用は、下痢、高血圧、疲労感、悪心・嘔吐、肝機能障害、味覚異常などです。
6)無増悪生存期間(PFS)
がん治療の効果を評価する指標の一つで、治療開始からがんの進行や再発が確認されるまでの期間、または患者が亡くなるまでの期間を指します。この期間が長いほど、治療の効果が高いです。