ニュース

PAI-1阻害薬の老化細胞などの除去機構に関する論文掲載のお知らせ

当社PAI-1阻害薬(TM5614)の老化細胞などの除去機序が、東海大学医学部及び東北大学大学院医学系研究科との共同研究で明らかになり、2026年3月27日Cell Death Discoveryに掲載されましたので、お知らせいたします。

https://doi.org/10.1038/s41420-026-03076-0

老化細胞、がん、障害を受けた細胞を除去することは生体を守る必須の防御機構であり、がん、神経変性疾患、動脈硬化性疾患、炎症性疾患をはじめとする多様な疾患の発症や進展に深く関与しています。老化細胞、がん、障害を受けた細胞を除去するためには、マクロファージが死細胞を貪食して除去する「エフェロサイトーシス」1)というプロセスが重要です。通常、これら死細胞の表面にはカルレティキュリン(CRT)2)と呼ばれる分子シグナルが出現し、これがマクロファージ上の受容体である低比重リポ蛋白受容体関連蛋白1(LDL-receptor related protein-1、LRP-1)に認識されることで死細胞がマクロファージのエフェロサイトーシスにより速やかに除去されます。しかし、老化細胞、がん、障害を受けた細胞にはプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)分子も強く発現しています。興味深いことに、PAI-1とカルレティキュリンはマクロファージ上の同じレセプターであるLRP-1に認識され、競合しています。PAI-1とLRP-1の結合力の方が、カルレティキュリンとLRP-1の結合力よりも強いため、PAI-1分子が存在すると老化細胞、がん、障害を受けた細胞はマクロファージのエフェロサイトーシスにより除去されません。

本論文では、PAI-1がカルレティキュリンと競合すること、マクロファージのエフェロサイトーシスを阻害して炎症を長期化させること、さらに、PAI-1阻害薬TM5614がマクロファージのエフェロサイトーシス機能を回復させ、死細胞の除去や組織の再生を促進することを明らかにしました。本論文は、TM5614が老化細胞、がん、障害を受けた細胞の除去や組織再生を促す作用機序の一端を解明する重要な知見と考えます。

1)エフェロサイトーシス
マクロファージなどの細胞が、死んだ細胞を貪食して除去するプロセスです。炎症の収束や組織修復を促進し、生体の恒常性を維持するために不可欠な働きをしています。

2)カルレティキュリン (CRT) 
死んだ細胞の表面に提示される「私を食べて(eat me)」というシグナルとして機能するタンパク質です。マクロファージの表面にある受容体である低比重リポ蛋白受容体関連蛋白1(LDL-receptor related protein-1、LRP-1)に結合することで、死細胞が除去されます。