肺がんは日本のがん死亡原因の第一位であり、非小細胞肺がんは全体の85%を占めます。その中で根治的手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者は年間1万人にも至ります。
非小細胞性肺がんモデルマウスを用いた非臨床試験により、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブとRS5614の併用投与はニボルマブ単剤投与よりも高い治療効果が得られることを確認しました。
さらに、PAI-1ががん血管の新生をもたらし、肺がん細胞の増殖能を亢進していること、ニボルマブに耐性となった肺がん細胞がPAI-1を多く発現していることなどを見出しました。
そこで、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(3次治療以降の患者)を対象に、広島大学、島根大学、岡山大学、鳥取大学、四国がんセンター、広島市民病院などの医療機関と協力して、ニボルマブとRS5614との併用投与の有効性及び安全性を確認するための前期第Ⅱ相試験を開始し、症例登録を終了しました。
本第Ⅱ相試験は非盲検試験として実施しており、全例RS5614が投与されていますので、結果も徐々に明らかになっています。
治験調整医師(治験代表医師)及び治験責任医師(実施医師)から、有効性(奏効)が確認できている患者もおり、RS5614の投与継続の依頼があり、治験期間を3ヶ月延長し、希望者にはRS5614を継続投与することとしました。
最終的な治験総括報告書は2026年8月頃を予定しています。
局所進行非小細胞肺がん患者に対しては、根治を目的として化学放射線療法が標準治療として行われ、化学放射線療法後に病勢進行や重篤な放射線肺障害を含む合併症が認められない症例では、免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブ[i]による地固め療法[ii]が施行されます。
実施中の第Ⅱ相試験において、RS5614の免疫チェックポイント阻害薬の効果増強が期待されること、また、早期の治療がより有効性が高い結果が得られていることから、次相として「局所進行非小細胞肺がんを対象に、初回標準治療である化学放射線療法とデュルバルマブによる地固め療法に対するPAI-1阻害薬(RS5614)併用療法の有効性と安全性を検討する医師主導治験」を、広島大学病院など12医療機関と2026年4月頃に開始する予定です(2025年11月26日適時開示)。
既に、2025年11月14日に医薬品医療機器総合機構(PMDA)との対面助言を終了しており、臨床プロトコールは確定済みです。
今後治験審査委員会(IRB)の承認、PMDAへの治験届提出を経て、医師主導治験を開始する予定です。
非小細胞肺がんに対する初回標準治療の課題として、1)放射線治療に対する抵抗性、2)化学治療に対する耐性、3)免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性、4)放射線や免疫チェックポイント阻害薬に伴う肺障害(副作用)などがあります。
次相治験の目的は、根治手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者対象とし、根治照射を含む化学放射線療法およびデュルバルマブによる地固め療法にPAI-1阻害薬RS5614を併用することで、1)化学放射線療法およびデュルバルマブによる抗腫瘍効果増強による根治率の向上と、2)放射線療法およびデュルバルマブによる肺障害(副作用)の抑制による治療安全性の改善が得られるかを検討し、RS5614併用治療が現行の初回標準治療を上回る新たな治療となり得るかを明らかにすることです。
当社は、国立大学法人広島大学と非小細胞肺がんに対する非臨床試験及び臨床試験に向けての共同研究契約を締結し、さらに包括的研究協力に関する協定書を締結して(2025年4月24日適時開示)、オープンイノベーション拠点(Hiroshima University x Renascience Open innovation Labo:HiREx)を設けています。これら肺がんの治験はHiRExを主体に実施しています。
[i] デュルバルマブ:デュルバルマブは、PD-L1という物質に結合して免疫細胞の攻撃力を高める免疫チェックポイント阻害薬です。主に、非小細胞肺がん(特に根治的化学放射線療法後の維持療法)の治療に使用されます。副作用には、間質性肺疾患、肝機能障害など免疫が関わる様々な臓器に影響が出ることがあります。デュルバルマブとニボルマブは、どちらも免疫チェックポイント阻害薬に分類されるがん治療薬ですが、デュルバルマブは抗PD-L1(がん)抗体薬で、ニボルマブは抗PD-1(リンパ球)抗体薬です。
[ii] 地固め療法:初期治療(例:化学放射線療法)でがんをある程度抑えた後、治療効果を維持・強化する目的で行う追加の治療です。再発や進行を防ぐことを狙います。