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ディスポーザブル極細内視鏡について(薬事申請)

2022年9月14日、当社IR情報として「ディスポーザブル極細内視鏡の薬事申請のお知らせ」を適時開示いたしましたが、ディスポーザブル極細内視鏡の概要についてご説明いたします。

国内において2020 年末の慢性透析療法を受けている慢性腎不全の患者総数は 347,671 人で(国民 363.1 人に 1 人が透析患者です)、このうち3%にあたる10,338人が腹膜透析(※1)を受けています(日本透析医学会調査報告書2020年)。

腹膜透析は在宅医療を可能とし医療経済的にもメリットがあり、血液透析(週3回、各4時間)に比べて患者の負担が少なく理想的な治療法です。しかし、腹膜が経年劣化し重篤な合併症を引き起こすことがあり、長期継続は難しいと考えられ、5年程度で中断を強いられています。現状では腹膜の状態を確認するためには、開腹手術もしくは腹膜鏡による観察しかありませんでした。

当社は、医療現場のニーズを出発点として問題の解決策を開発し、医療現場で最終製品をイメージして最適化開発を行い、医療イノベーションを実現する「バイオデザイン」という手法を用いて、東北大学、聖路加国際大学、東海大学、順天堂大学、東京慈恵医科大学など大学等医療機関の腎臓内科の医師/研究者と共同で、ディスポーザブル極細内視鏡を研究開発しました。

本研究成果は、2020年11月第65回日本透析医学会学術総会における招請講演で発表され、またピア・レビュー科学誌にも掲載されました(Nakayama M, Hamada C, Yokoyama K, Tanno Y, Matsuo N, Nakata J, Ishibashi Y, Okuzawa A, Sakamoto K, Nara T, Kakuta T, Nangaku M, Yokoo T, Suzuki Y, Miyata T. A disposable, ultra-fine endoscope for non-invasive, close examination of the intraluminal surface of the peritoneal dialysis catheter and peritoneal cavity. Scientific Reports. 2020; 10: 17565)。

腹膜透析患者は、透析液を注入するチューブを常に腹膜に挿入した状態にあります。本極細内視鏡は、この細いチューブを通じて挿入し、非侵襲的に腹腔内を観察することを可能とする外径約1mm程度のディスポーザブル製品です。従来の消化器系の内視鏡とは異なるコンセプトで開発されたもので、胃瘻チューブ、尿道バルーン、気管チューブ、太めの注射針からの挿入が可能で様々な臨床的有用性も期待できます。

腹膜透析への適用について、2020年5月に大手医薬品及び医療機器会社である腹膜透析医療におけるリーディングカンパニーと共同開発及び事業化に関する契約(ライセンス契約)を締結しました。このディスポーザブル極細内視鏡は、メインフレームであるファイバースコープ(※2)と付属品であるガイドカテーテル(※3)からなりますが、今般、ファイバースコープのみが先行して申請されました。本ディスポーザブル極細内視鏡は、非侵襲的に腹膜透析患者の腹腔内の状態を観察することができ、腹膜の経年劣化や重篤な合併症の有無を診断することができる医療機器であり、腹膜透析患者のQOL改善や長期継続に貢献することが期待されています。

(※1) 腹膜透析:透析の装置として、自分の体の腹膜(胃や腸などの臓器を覆っている薄い膜)を使う方法です。お腹の中に管(カテーテル)を通して透析液を入れておくと血液中の老廃物や不要な尿毒素、電解質などが透析液の中に移動します(拡散)。また、透析液と血液の浸透圧の差(透析液は糖などの浸透圧物質のため、浸透圧が血液より高くなります)で体の余分な水分を除去します(浸透)。

(※2) ファイバースコープ(使い捨て):ディスポーザブル極細内視鏡の本体です。先端部は径 1mm程度で、腹部に留置されているチューブの中を通ります。

(※3) ガイドカテーテル(使い捨て):ファイバースコープと組み合わせて使用することでファ イバースコープの先端部分を自由に動かすことができます。ガイドカテーテルを使用し なくても、ファイバースコープのみで腹膜の状態を観察することが可能ですが、使用する ことで操作性が向上します。